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貫地谷南3
「蛹の様子はどうだい」
「蛹……あぁ。怒られましたね」
「君はなぜ怒られたのか理解はできているのか」
「わかるようなわからないようなって感じですかね」
「君はマジョリティだ。多数派の意見、感情、考え方を持つ人間だ」
「……なんか、いい気はしませんね。そういう言い方をされると」
「んーこの言い方は人を嫌な思いにさせてしまうんだな……えっと……」
「変わり者という評価をされない人間ってことですか」
「そうだな。この場合は自分を下げて相手を上げればいいんだな。そう。僕みたいな変わり者じゃない」
「……でも、理人も変わり者ではないですよ。……ちょっと皮肉屋なところはありますけど」
「変わり者の特徴はすべてが目に見えるものじゃないよ。僕みたいなのは珍しい方さ。日
本という国は帰属意識が高い。いわゆる、周りから浮いているという状況をマイナスと認
識する。でもこれは、言い換えると個性的というもので、世間が必要な人材として求めて
いるものだ。不思議だよな。個性を殺す教育をしておいて、いざ自分の力でどうにかしな
いといけなくなった時、殺したものを求める。……あれ、また最初の話から遠のいちゃっ
たかな」
「理人が変わり者だと言いたいんですか」
「違うよ。みんな変わり者だということだ。個性を殺される時期に、いかに自分の個性を守れるかが大切なんだ。君みたいに器用な人間はうまく個性を守りながら成長できる。そして求められたとき、求められた量で提供できる。でもみんながみんなそんな器用じゃないんだよ。散々殺されて、悲鳴を上げ続けた個性はある日突然、狂気をまとって現れてしまうこともある」
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