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貫地谷南 2
「遠野先生、質問いいですか?」
「なんだい?」
「ジル・ド・レェはジャンヌダルクが魔女の烙印を押されて火あぶりで殺されなければ、清き戦士のままで入れたのでしょうか」
「そうだね…僕はジル・ド・レェみたいに狂信的になれるような人に出会ったことがないからなぁ。でも、愛だの恋だの……その手の力は未知数だからね。好きな人に近づくために、性質が変わったり、見た目が変わったり……とても興味深い」
「性質が変わる?」
「僕は愛や恋は変化するための素材だと思うんだ。いい方向にも悪い方向にも変われるね。
あれ、ジル・ド・レェとジャンヌダルクの話からは遠のいちゃったな……」
「…いいえ。ためになりました。ありがとうございます」
「…君の近くに蛹がいるね」
「…はい?どういうことですか」
「変化しようとしている人がいるみたいだってことだよ」
「何を根拠に言ってるんですか?まさか、勘だなんて……」
「勘だよ。僕は勘というものはなかなか侮れないと思っている。……僕に、ジャンヌダルクとジル・ド・レェのことを聞いたのは、遠回しに何かについて相談しているように聞こえた。君が意識してか無意識かは知らないが」
「……自分でもわからないです。もしかしたら先生が言っていることが当たってるかもしれません」
「まあ悩むといい。でも先走ってはいけないよ。よく見るんだ。蛹が綺麗で無害な蝶になるとは限らない」
「本当に先生は変わった表現をしますね。……そういや友達が適当な授業だなって言ってましたよ?」
「僕は自分のしたいことしかしないし、言わないからね。その友達は大正解だよ。その日、君たちに話したい昔話をしているだけだから、大学の人からはすごく怒られる。この国は変わり者や変わる者にとても手厳しい」
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