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振り仰げば、快晴とは言えないけれど、曇っているわけではない。氷色した薄青い空には淡く白っぽく輝く太陽が居座っている。けれど、その下、真綿のような雪が後から後から降り零されていた。
こんな天気は初めてだった。国語の授業で『風花』という言葉を習ったけれど、それはちらちらと舞う少量の雪を指していたはず。これだけたっぷり降るのでは、ちょっと違うかもしれない。だったらなんて呼べばいい? 少しの間、私は考える。雨なら、天気雨。……だったら、天気雨ならぬ天気雪はどうだろう。
私はこの不思議な空模様がいたく気に入った。この舞台に、それはとても相応しい演出に思えたのだ。
息が整った頃を見計らい、物音を立てないよう、社が見える場所まで移動する。
そして……ああ。視線を巡らせて、私はほおと嘆息した。
白いダッフルコート、赤いマフラー、艶やかな黒髪。降りしきる雪の中、少女がたった一人、ポツネンと佇んでいた。
それはこの一年近く続けてきた儀式のようなものだった。放課後に遊ぶ約束をして、わざと嘘の待ち合わせ場所を教えて、迎えに行ってやる。面倒だったが、香世子との時間を確保するためにはしなくてはならない手順だった。
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