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〝お妃さまとあそんでいたの〟
〝みゆき、お妃さまとなかよしだもん〟
〝ママもおともだちになりたいの?〟
何度か尋ねたものの、誰に連れ出されたのか、どうしてついていったのか、美雪は明らかにしなかった。知っていて隠そうとしているのか、本当に知らないのか、それすらはっきりしない。昨日は疲れていたのか早々と眠ってしまい、今朝からは熱。寝込んだ子に問い質すわけにもいかず、私はもやもやした気持ちを抱えていた。
もっとも、美雪が正直に答えたとしても、状況は何も変わらないけれど。
薄氷が張ったような冬色の空の下、考える。私は一体、どうすべきなのだろう。
最初、母が音量をいっぱいにしてテレビを観ているのだと思った。襖一枚隔てた和室では美雪が眠っているというのに、どうしてあの人は遠慮が無いというか、無神経なのだろう、と。
だが、玄関を開けて響く声の調子に、テレビに向けた独り言とは違うニュアンスを感じ取る。いつもよりもトーンが一段高い。そしてようやく気付く。玄関には見知らぬパンプスが並んでいた。
「お母さん!」
「ああ、お帰んなさい。何、血相変えて」
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