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〈一幕 直美〉 第1話 再会
1-1
『白』には、甘く柔らかく芳しいイメージがまとわりつく。
お砂糖、ホイップクリーム、ババロア、メレンゲ、バニラ、ミルク、フリル、レース……
うっとりと、滑らかで、陶酔させられる、誘惑の色。
子どもの頃、親に白いワンピースをねだったが、すぐに汚すのだからと買ってもらえなかった。自分で買えるようになった頃には、その難しさを理解していた。
手に届かない。触れたい。汚したくなる。
それは、目の前で優雅にティーカップに口をつける幼馴染を象徴する色だった。
天気雪、とでも呼べばいいのだろうか。
薄紙を透かしたような白々と明るい太陽の下、たっぷりと光をまぶされて降りしきる大粒の雪。窓の外に広がる冬枯れの稲田は、まるで粉砂糖を振ったガトーショコラ。青空ではないけれど、妙に眩しい冬の午後――それは風花とも違う、不思議な景観だった。
東海地方A県の田舎町。太平洋側に位置し、冬は乾燥した季節風が吹くため、滅多に積雪しない。子どもの時から雪は珍しい存在だった。それが今、惜しげもなく、天より降り零されている。
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