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「ほら、あのとき、彗星にお願いしたら無事にチョコレートが渡せるって噂が流れていたでしょ。男の子の場合は“もらえる”だったけれど。それで、誰かにあげたりしないのって聞いたら、やーちゃん、もらう側がいいって答えて。じゃあもらうとしたら何がいいのって聞いたら、星が良いって」
「なんでそこで星なんだろう」
「だから、自分で言ったことじゃん。私にはわからないよ」
そうは言われても、自分の無欲さを嫌というほど知っている私が一番腑に落ちていない。流行りのマンガやCDと言った物にしても、家にあれば見聞きはすれど、自分から買おうとはしない。テストの順位や体育の試合にしても、結果が良かろうが悪かろうが、こんなものか、で済ませてしまう。もちろん七年前の私も同じだったのかはわからないが、今の自分の無欲さと、性格に変化がないという自覚から帰納すると、やはり昔も無欲だったのだろう。
そんな私が、冗談でもバレンタインというイベントで何かを欲しがるとは、なかなか考えにくいことだ。
さすがの私も、今は別のことで世間を騒がせている彗星の、神秘的な姿に感化されたのだろうか。
しかしそれではあの拍子抜けした記憶と矛盾するので、その説はすぐに棄却されてしまった。
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