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冬になると、どうしても湯船につかる時間が長くなる。
ストーブやエアコンと言った暖房器具では、体の内側から温まるこの感覚は味わえない。体の熱に押し出されて、今日の疲れが出ていく。
火照った体で部屋に戻る。ふと、何気なく窓を開けて、夜空を見上げる。冷たい風が頬を撫でて、とても心地良い。
オリオン座の一列に並んだ三つの星。金星だろうか、ひと際明るく光る星。そのほかにも点々と、小さな星が瞬いている。しかしどれだけ目を凝らしても、やはり、彗星の姿はどこにもなかった。
三日前のことだ。
七年ぶりに現れたチョコレート彗星は、徐々にその姿を現し、空の上を通過し始めていた。七年前よりも条件がよく、空の端から端をつなぐほどの長い尾を見せてくれる可能性がある、と天文学者たちが期待を煽ったおかげで、世間は前回よりも大盛り上がりだった。私も学校帰りに空を見上げてみると、確かに尾が長く見え、想像の彗星に近い形をしていた。
しかし、誰も予期していない現象が起きた。
彗星が、突如として姿を消したのだ。
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