Episode Ⅰ~Ⅸ

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Episode Ⅰ~Ⅸ

 もうやめてくれと、誰に願えばいいのか。  オレにはわからないのです。  夢見るお年頃として厨二病という言葉が流行り出し、本当にオレにピッタリの言葉だと思えた。  笑わないで聞いて欲しい、オレは異世界のソルジャーとして今のこの世界を生きている。  きっとこれは何かの悪い夢とも思ったし、こんな事は実際に起こり得るはずない。 ...................................................... 吉田ミッションクリア  目の前にそんな文字が現れた。 ちなみにオレはゲームなどやっていないし日々起こる現実がどれなのかわからない世界でただ素直に生きているだけである。  夢の世界でオレの脳みそは、どこぞのゲームとリンクしている。機械も通していなければ、そんなゲームの情報など一切なく普通に生活していたオレの作り上げた勝手な妄想だとさえ思う。  でもオレはゲームの世界に、眠る度に引き込まれるんだ。  東陵高校へ通い出してひとつだけ、その夢の手がかりを見つけた。 それは、この世界に置ける通貨の円ではなくゲームで入手する通貨〝mon(もん)〟が校内に落ちてたのだ。  中庭にある花壇の近くにあったその通貨は、ゲームでオレも度々入手するが、この世界でこの通貨を見たのは初めてだったし、ネットで調べても『文』という昔の通貨はあるがmonは記載がなかった。  木々が生い茂り、見渡す広大な土地。そこに一軒家を買った。見た目はとりあえず...廃墟なのだが、鍵を差し込んだ。  システムなのかも知れないが、その鍵が入ると横に小屋が現れ中からブルル...と息遣いが聞こえる。  馬が2頭、ヤギが2匹その小屋にはいるのだ勿論餌もちゃんと与える。  ドアを開けてウインドウを開き装備を外すと空き家だった家の中が一気に人の生活空間に変わる。  目の前には暖かい暖炉と、4人掛の大きなソファーがあって、下に敷かれている絨毯はフカフカで足の指に纏わり付く。そこをずんずん押し進み、そのソファーに身体を投げ出す様に横になった。 「今日は...なんか疲れたな...」  オレの声は脳に直接響いてくる。 音の聞こえ方で、現実がどこかを理解している。  もうすぐ目覚めの音が鳴る。その音にオレは戻されるのだ。その前に今日の収穫をストレージで確認しておこうと、ウインドウを開く。  目の前にストレージ内の一覧が並んだので、それをフリックしながら、店に売ったり捨てたり。今日は馬達の食事を狩っただけで、ミッションクリアになっていた。  レベルはこの世界に長い間いたお陰で、かなり上位にくい込んでいるが、いつも初心者の様に振舞った方が、気持ちは楽だ。  だから装備も、命の危険がない場所であればそこら辺のモンスタードロップで賄えた。  そしてストレージ整理を終えると、頭の奥からオレを呼び覚ます音が聞こえ出した。  そろそろかと目を閉じる。  オレはそんな毎日を過ごしていた。 ......................................................  目覚ましがけたたましく電子音を響かせる。それを布団の中から手だけを伸ばして止めると、布団の中で丸くなる。  ウトウト...と意識が混沌すると、またけたたましく音が響く。スヌーズめ!  オレは時計を止めて、重たい身体を引き摺ってシャワーで目覚めると、あの世界とは全然広さの無い場所でもそもそと、置かれていた朝食を口にした。
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