とけないチョコレート

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 今日は二月十四日、バレンタイン。友人やお世話になった人、恋人に……そして好きな人にチョコレートを渡して日頃の想いを伝える日。好きな人にあげる世の女の子たちは、それはもうこの日を待ち望んでいたと同時に心臓が壊れるかってくらいドキドキしていたに違いない。  かくいう私、雛沢美奈もチョコレートを好きな人に渡すため心臓が破裂しそうだ。  ギュッと手に持った可愛らしく赤とピンクで包装された箱の中には、何度も何度も失敗しては作った力作が入っている。材料が足りなくなっては買い足し、注意事項を調べて、メイキング動画と睨めっこしながら作った力作。彼は喜んでくれるだろうか。もしかしたら喜んでもらえないかもしれない。そんなこと考えながら下駄箱で彼を待つ。 (……来た!)  生徒たちが続々と登校してくるなか数メートル離れたところに歩いてくる彼……高宮司の姿があった。茶色に染めた髪をふわふわとワックスであそばせて、両耳には四個ずつピアスがついている。鋭く猛獣のような目をしながら歩いていた司は、私の姿を確認すると狼から柴犬へと変化したかのように、それはそれは満面の笑みで駆け寄ってくる。 「美奈、できたのね!?」 「司! ちょっと落ち着いて」  興奮しているのか司の素が出てしまっている。慌てる私を見て、彼はハッと我にかえると口をおさえて周りを見渡した。幸いなことに誰も彼の違和感に気づいていないみたいだ。  二人してホッと胸をなでおろした次の瞬間には司の表情はさきほどの鋭い表情へと変わっていた。 「…………行くぞ、美奈」 「うん!」  少し強引に取られた手にドキドキとしながら二人の秘密の場所へと向かった。
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