とけないチョコレート

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 屋上へと続く階段、その踊り場に二人は座っていた。 「美奈! はやく見せてちょーだい」 「うん!」  司の目がキラキラと輝いている。会った時のあの顔もこの包み箱が見えたからなのだと思うと少し複雑だ。  司に箱を渡すと綺麗に包み紙をはがして中を開けた。 「かわいいわぁ~~~!」  中から出てきたのはチョコレート。丸やハート、薔薇など様々なものが入っている。  司のお姉さん方に影響されて女性のような言葉遣いをする司は、どうやら可愛いものが大好きらしく、可愛らしいチョコレートの形に頬がうっすらとピンク色に色づいていた。喜んでくれたみたいで、嬉しい。 「さっそく、いただいてもいいかしら」 「どうぞ!」 「ふふ、こんなに可愛いと食べちゃうのもったいないわね」  そっとバラ型のものを取り出すとシャラリと金色のチェーンが揺れ落ちた。 「…………えっ!?」  大きく目を開かせながら、揺れるチェーンを目で追う司に見たかった顔が見れたと思わず顔がにやけそうになる。 「そうそう、これ全部チョコレート型のキーホルダーなの。どう? びっくりした?」 「びっくりしたわよ、もう! あら、でも手作りって言ってなかったかしら?」 「手作りだよ、コレ! ほんとに難しかったの。レジン液より染料の方を多くしちゃったみたいでなかなか固まらないし……気泡は入っちゃうしで……」 「……大変だったのに最後まで作ってくれたのね……ありがとう。手作りなんてびっくりしたわ、大切にするわね」  司は優しくわたしの頭を撫でながらそう言った。その言葉だけで数日間の努力が報われる気がした。
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