とけないチョコレート

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 最初の慣れないうちは、慌てるばかりでパーツをばら撒いてしまったりレジン液を取り扱ううえでの注意事項を知らなかったりと色々大変だった。一度は諦めて普通のチョコレートを渡そうと思ったけれど、どうしても溶けないチョコレートを渡したかった。  決して、溶けて消えたりしないチョコレートを……。 「すき」  想いが、溢れた。  思わず溢れた想いが、彼に明確に伝わるよう今度こそはっきりと自分の意思で言葉にする。 「司が、好き」  少しの間。  少しの静寂。  彼は何度も何度も表情を変えて、隠すように顔を下に向けてから小さな小さな声で呟いた。 「……そうか、バレンタイン……だもんな」  それから顔をあげた彼の表情は真剣そのもので目があった瞬間にドキリと心臓が大きく響いた。 「俺…………」  司が口を開くと同時、学校のチャイムが鳴った。言葉をつむぐのをやめてしまった彼は箱の中の一つを取り出すとそれを私の薬指にはめた。 「続きは3月14日だな。それまで、それ持ってろ」 「…………それって」  どういう意味なのか。  そう問いかける前にチャイムが鳴りやむ。それと同時に彼は立ち上がるといつもの幼なじみの顔で手を差し伸べた。 「授業始まっちゃったわね。早く行くわよ」 「うん」  差し伸べられた手を掴む。重なった手の間でピンク色の薔薇がゆらゆらと揺れていた。
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