彼へのプレゼント

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 招かれるまま玄関へ。ブーツを脱いでコートに手をかけると、彼がコートを脱ぐのを手伝ってくれる。そのままコートは取り上げられて、コート掛けに収まった。彼のコートの隣である。そんなことだけでも少しうれしい。今日の楽しみに思いをはせていると、近付いてきた彼が私の頬に手を伸ばす。彼の繊細な指が私の頬を優しく撫でて、温かい手で温めてくれる。私は紙袋を持っていないほうの手で、彼の大きな手に自分の手を重ねた。私はこの、男性らしい力強さを形の美しさで隠した、芸術家の手が好きだ。 「冷えているね。寒かっただろう。ごめんね、本当は迎えに行ってあげたかったんだけど」 「ううん、大丈夫。あのくらいの距離どうってことないし、歩くのも楽しかったから」  至近距離で彼の目が笑んだ。その手の温かさに顔が赤くなるほど温まるのを感じた。 「手を洗っておいで。終わったら居間で待っていてほしい」の言葉に従い、洗面所へ。白とピンクのかわいらしいセーターに乱れがないか、髪の毛が冬の風に崩れていないかを確認する。メイクも大丈夫そうだ。それを確認してから、居間へ向かう。そこで、キッチンのほうから甘いにおいが漂ってきていることに気が付いた。そちらに行こうとすると、彼が慌ててキッチンから飛び出してくる。私の視界に立ちふさがってキッチンを隠す。 「だめ! あっちで待ってて! 今はここが僕のアトリエだから作品完成まで立ち入り禁止です!」 「えっ、なんで!」 「完成品が見せたいしうまくいくか心配だからだよ」  失敗したって大丈夫なのに。それにそんなに隠すほどの作品とやらは一体なんなのだろう? ますます気になってしまう私を彼は抑えて、キッチンから背を向けさせる。 「そんなに好奇心が抑えられないなら、居間にも君が気になりそうなものを置いておいたから、そっちの中身を当ててみるといい。推理勝負だよ。僕は君の持ってきたプレゼントの中身を当てる。君は居間に置いてあるプレゼントの中身を当てる。時間は作品が出来上がるまで。あと……13分くらい!」  そう言って私は居間に送り出された。居間の食卓テーブルの上にある極彩色に目線が惹きつけられる。
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