彼へのプレゼント

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「わぁ! 綺麗!」  そこにはプレゼントボックスが置いてあった。ピンク色の包装紙で包まれた、縦長のボックス。大体高さ20cmくらいの直方体、底面は5×5cmほどの正方形だ。天辺にはちょこんとリボンが乗っている。周りは小さなひまわり、ブーゲンビリア、ゼラニウム、赤いバラで飾り立てられている。乾いた感じがするのに鮮やかな発色であるそれには心当たりがあった。プリザーブドフラワーだ。それをワイヤーと組み合わせて立体的な作品にするのが彼の十八番である。 「触ってもいい?」 「それはダメ。触らないで当ててみて」  私は手を引っ込め、それに顔を近づけてみる。きれいなラッピングを施されたプレゼントボックス。ピンク地にかわいらしいハートマークが淡いピンクや赤、白でランダムに描かれている。かわいらしいラッピング材だがあまり見た事のないデザインだ。それになんだか、ラッピングのまとめかた、その折れ目に違和感がある。あまりにも滑らかなように感じたのだ。なんだかその素材感も、微妙な透け感があるように思える。テーブルに両手をついて限界まで頬をテーブルに押し付け、窓越しの光に透かそうとする。プリザーブドフラワーで影になっているがなんとなく、やはりと思う。 『この包装紙、紙じゃないかも』 包装紙の折り目、その裏にはハート模様が描かれていないのがわかる。それに、ただの紙にしては重みと言うか厚みがあるように思うのだ。私はプレゼントボックスの周りを一周して決定的なことに気付く。 「セロハンテープが貼ってない。糊付けされたような感じもしないし、これはラッピングじゃない!」 「よくわかったね」  しかしこれは答えではない。ただのプレゼントボックスに見せかけただけの作品、と言うのはないだろう。彼は意外と人を驚かせるのが好きだ。見た目そのまま、ましてやただのオブジェなどこんな時に用意するとは思えない。何か仕掛けがあるはず。また周りを動きながら観察する。箱に被らないように、しかし一体化するように用意された花のオブジェが本当にきれいだ。鮮やかで、どこか無機質なのになめらかで香り立ちそうなプリザーブドフラワー。きっと咲いていた時から美しかったに違いない。
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