彼へのプレゼント

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 私は、今になって自信を無くしていた。私のプレゼント――つまり思考をこれだけ読まれているということは、私の裏をかくことなど容易いということだからだ。私はもう、自信なんて一切ない。これは外れだ、という確信がある。でも、それしかもう思いつかなくなってしまったし、考える時間がない。チョコだ、そう思った。でもこれは絶対に違う。椅子にエスコートされて座り、彼を見上げる。きっと私は情けない顔をしている。ちょっぴり泣きそうだ。 「外れたと思ったんだね。一応、答えを聞いておこうかな」 「……チョコレートだと思った」 「泣きそうな顔をしないで。そんなに遠くないし、結構共通点があるよ、大丈夫。食べ物ではないんだけどね」  食べ物ですらなかった。彼は、じゃあこれから答え合わせ、と言ってカーテンを閉めに行った。部屋が一気に暗くなる。私は良く見えなくなった目をしばたかせた。 「紙じゃないのは正解だ。チョコレートのように形を作ることができる。模様を描くこともね。においを練りこんだ商品とかは、女性の間で人気なんじゃないかな。お風呂に浮かべて使う人もいる。熱で溶けるし、やわらかくなる。冷えると固まるところもチョコレートと一緒だ」  それを聞きながら、私は考える。つまりこの素材は、柔らかくして自在に形作ることができるということだ。ガラスではないだろう。そんな光沢はないし、彼の家にガラスをとかせるだけの設備はない。彼自身、硝子の作品は扱ったことがないはずだ。それに第一、においがない。お風呂で使うこともない。私の中で出てきた答えは。
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