プレゼントの中身

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プレゼントの中身

「香り付きの、蝋燭?」 「そう、アロマキャンドル。僕の作った作品と言うことなら正解だよ」  カーテンが閉め切られ、暗くなった部屋。しゅぼ、とライターの音がする。オレンジの揺れる光に照らされた中に、彼の手と、プレゼントボックスが浮かび上がる。きれいだった。すっと伸びた指がボックスの上のリボンを外す。そこには蝋燭の芯が隠されていた。ライターがそっと触れるようにして、芯に火を移す。ピンク色のキャンドルが色付くように灯り、あたりを照らし始めた。私は、プリザーブドフラワーが蝋燭に触れないように配置されていた意味を実感する。チョコレートのような甘いにおいが強くなって、その場は紅茶とクッキーと、チョコレートの匂いであっという間に満たされてしまった。蕩けるようなにおいに私の頭は浮遊感のある心地よさに身を任せながら、隣の椅子に座った彼を見上げる。 「蝋燭が消えるまで、僕とゆっくり紅茶を飲んでくれるかな」 「そんなこといわなくたって、当然だよ」 私は笑って、腕を伸ばしてくる彼に応えた。この腕の中が、世界で一番ドキドキして、それなのに一番安心する、最高の場所だ。キャンドルの灯が揺らめく。私たちは寄り添って、紅茶とクッキーを楽しんだ。少し不揃いな大きさと形のクッキーがかわいらしい。 「これはハートにしたかったんだ。こっちは星。こんなに形が変わるなんて思わなかったよ」 「普段器用なのに、なんだか不思議だね」 「仕方ないだろう、お菓子は作ったことが無かったんだから。焦がすんじゃないかとひやひやしてたよ。紅茶、美味しいね。クッキーと合う」 「ストレートにしたのは『十分甘いから砂糖はいらない』とか?」 「良く知ってるね。その通り。先を越されちゃったな。君がいるから十分甘いよ」  恥ずかしがる様子もなくさらりと言葉を続けてくる唇に、私はクッキーを押し付けた。ふっと目を細められ、慌てて手を引っ込めようとしたときにはもう遅い。手を掴まれて指ごとクッキーを食べられた。光源が蝋燭だけで本当に良かったと思うけれど顔を隠してしまったから赤くなっているのはバレバレだろう。本当にいつも手のひらの上で転がされている! 顔から湯気が出そうだと思ったあたりで、手が解放された。紅茶を飲む彼の横顔がまた綺麗で、腹立たしい。でも、どうしようもなくそれに魅かれているのだから仕方がない。
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