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私には彼氏がいるらしい。
「ねぇ。美里……どうしたのじっと僕の顔を見て……そんなにかっこいい? 僕」
確かにカッコいい。私にとっては好きな人なんだろうな。
「美里はさ、可愛いから。僕、心配なんだよ? 最近物騒でしょ。送り迎えするだけ
じゃダメだったんじゃないかって」
しかし……この状況はいったい?
「これは美里のためなんだよ。美里が誰かに連れ去らわれないように。美里が嫌な思いしないように」
彼が口付けと同時に甘ったるい何かを流し込んだ。まるで、コップ一杯の水に可能な限りいっぱいの砂糖を無理やり溶かしたような……そんな甘さ。
「……美味しい? これはね美里と僕が自由になるための薬。……痛くて怖い思いをしないでいいため に」
たくさんの痕の上に彼は跡をつけていく。痛かったり、くすぐったかったり。
「美里。気持ちいいみたいだね。すっごい可愛いよ?」
すでに私は諦めていたのかもしれない。
「僕も美里も……あと少しで世間のしがらみから解き放たれる。お母さんもお父さんもその他のみんなも 認めてくれる。許してくれる。」
喧嘩なんかしたっけ……と頑張って頭を働かせてみるが、彼のキスは私を蕩かしてゆく。
「もうそろそろかな……僕もふわふわしてきたし。それも外してあげようか」
手足の痛々しい赤い跡の上にふわふわな手錠がつけられていたが、外してくれるらしい。
「今日はお休み。……また会おうね、美里」
『ニュースをお伝えします。1週間前から行方不明となっていた望月 美里さんがたった今、意識不明の重体で発見され、その近くで身元不明の男性が同じく意識不明の重体で発見されました。
望月 美里さんは2月7日の20時ごろ彼氏の家に行ってくると言ってから行方が分からなくなっており、家族から警察に捜索願が出されていました。
遺体には死因となりそうな外傷はなく、薬物による犯行であるとみて鑑定を行っています。
現場には「家族」と書かれた紙がいたるところに張り付けられており、警察は、全て美里さんと同じ場所で発見された男性による犯行である可能性が高いとみて、調査をすすめています』
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