162 初めて
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162 初めて

「あ、これ……懐かしい」 午後。 机の中を整理していた中央第一営業所の松田は、奥から冊子を取りだした。 「なんですの?」 「昔はね、夏山愛生堂新聞って社内報があってね。今はメールで来るんだけど、これは面白いから取って置いたのよ」 「これって。昔の姫野さんですか?」 「そうよ。え?どうかした」 「いえ?姫野さんの弟さんにそっくりで。びっくりしたんです」 この記事は姫野が入社した一年目の3月号だった。そこにはよりも初々しい彼がいた。 「これはね、2月14日のバレンタインデーに、姫野君に大量のチョコが贈られたっていう記事なの」 会社の前に立たされて無表情の姫野の背後にはトラックが停まって映っていた。 「もしかして、このトラックの荷物が全部そうなんですか?」 「満杯ではないけど、そうよ」 「……すごい人気ですわね……」 姫野の人気ぶりに驚く小花に、松田もへえと驚いた。 「そもそもね、姫野係長はスタイルも良いし、ハンサムだからモテルのよ。知らなかったの」 「ハンサムなのも知りませんでしたわ。そうか、ああいう顔がハンサムなんですね……」 仕切りに感心している小花に、松田は椅子を進めた。
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