恋慕し

5/9
前へ
/24ページ
次へ
 私の両親は、幼少期を孤児院で過ごし、そして結婚した。  やがて兄と私が生まれた。  両親は元々登山が大好きで、その影響で兄も私も登山をするようになった。  そして去年。  インフルエンザに罹った私を残して、両親と兄は雪山登山に向かった。  それがこの山。  「やーいやーい、お留守番~」  「うっさいわねえ、あんたなんか雪に埋もれて死んじゃえ」  それが、兄との最後の会話になった。  両親と兄は、本当に雪に埋もれてしまった。  雪崩に巻き込まれて、春まで発見されることはなかった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加