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大事な人といられるのなら、それが百年じゃなくてもいい。
たとえ一年でも、たとえ一日でも。
私の過去、私の想いを伝えると、彼は私をそっと引き寄せて、ありがとうと言った。
「ねえ、名前を教えて」
私は彼に尋ねた。
すると、彼は小さく首を振った。
何度となくするそのしぐさに、私はその都度寂しさをおぼえる。
「そんなものは、ない」
雪女、雪男には、名前を付けるという風習はないらしい。
それでも彼は、ちょっと寂しそうな顔をした。
「でも、あなたを呼ぶときに不便だし……じゃあ、私がつけてあげる」
その時の彼の表情は、あの時のように伏し目がちに照れているようにも見える。
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