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「さ、遠慮しないであたってくれ」
彼にいざなわれるままに、ゆっくりと囲炉裏の方へと向かう。
急に暖まると溶けてしまいそうで、私は少し距離を置いて、ゆっくりと自身のぬくもりを取り戻そうとした。
「おい」
急に声を掛けられ、私はびくっとしながら背筋を伸ばした。
「は、はいい!?」
声が裏返ってしまった事もあってか、そんな私を見て彼が少し笑った。
この時初めて彼の顔を見た。
紅に染まった室内、ゆらゆらと覚束ない灯りではあったが、私は彼の容姿にくぎ付けになった。
色白で細く端正な顔立ち、雪の中、私をおぶってきたとは到底思えないほどの華奢な体。
あれだけ広いと感じた背中は、実は目の前の彼じゃなかったんじゃないかとさえ思えてしまう。
てっきり熊のようなごつい男を想像していた私は、余りのギャップに固まってしまう。
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