ところにより、ラブ

2/3
前へ
/3ページ
次へ
 お客様も残り少なくなったチョコを奪い合うように買うから、阿鼻叫喚、地獄絵図だ。  もっと早よ買いに来いや! そもそも聖人の命日やろ!(ネット知識) 浮かれとってええんか!  と怒鳴りたいのを我慢して、必死で働いた。 「休憩、行ってき」  昼もだいぶ過ぎてから、係長が来てくれた。  催事場と同じく、えらいことになっている洋菓子売り場を横目で見ながら、ロッカーからカップ麺を取ってきて、休憩室に入った。  社食までいく時間がもったいない。  休憩室にいた何人かが、俺と入れ替わるように出て行った。  残ったのは洋菓子売り場の契約社員の女性だ。結構かわいいが、飲み会に全然来ない子だから、これは親しくなるチャンスだ。  何を話題にしようかと考えながら、麺をズルズルすすっていたら、彼女のほうから「あのぅ」と声をかけてきた。 「これ、よかったら、どうぞ」と差し出されたのは、催事場にも出ているショップのチョコの箱。 「え、俺に? ええの?」 「はい、もちろん」  予想外の展開に俺は内心慌てふためいたが、「ありがとう」と飛び切りの笑顔を浮かべる。  よかったら、今度飲みに――と続けようと思ったが、彼女は別の箱を出してきた。 「よかったら、これも」  そちらは、開封済みで9つの枠に3つしかトリュフが残っていない。     
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加