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晩ご飯が済んで一息ついた頃、思い切ってヒナタに訊いてみた。
「ねぇ、ヒナタ。条林大学の佐野って准教授、知ってる?」
布巾でテーブルを拭いていたヒナタは一瞬動きを止めた。
「今日学校で先生から訊いたの。私の高校在学中の授業料とか寄付とか、凄い金額が学校に振り込まれていたって」
「……」
「そのお金を振り込んだって人が佐野さんっていう人なんだけど」
「知らない」
「え」
「俺の記憶回路には佐野という名前の人物はいない」
「でも同じ大学の先生だよ? 名前ぐらい聞いた事──」
「俺は何も知らない。博士と小春の事以外の情報は与えられていない」
「そ、そう…なんだ」
静かな口調だけれどとても威圧を感じさせる言い方だったために私はそれ以上食い下がる事が出来なかった。
(学部とか違うと分からないものなのかな…。ヒナタはロボットだから余計にそうなのかな?)
身近な手がかりを失った私は少しガッカリした。
翌日──
「おぉーい、小春ー学校行こうぜー」
「あれ? 和馬、珍しいね」
今朝は珍しく早い時間に和馬が自宅まで迎えに来た。たまにこういう事があるのだけれどそういう時は大抵──
「数学 !頼む、ノート見せて!!」
「……やっぱり。和馬が家に迎えに来る時はいつもそれ目的だよね」
和馬は宿題が出来ない時、私に頼るためにこうやって迎えに来るのだ。
「小春、いつもより早い時間だが──」
「あ、ロボット!」
奥から顔を覗かせたヒナタに向かって和馬は指を差しながら叫んだ。
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