ひだまりロボット

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私が住んでいるのは町工場が密集しているような下町風情溢れる処だった。 大手企業から仕事を請け負っている小さな自営業の工場が多くて、そんな地元の人々の絆はとても強いものだった。 「こんにちは、ヒナタくんいる?」 「あれ、牧村のおばさん。ヒナタなら買物に行ってるけど」 「そうなの? ざーんねん」 「そんなあからさまに残念がらないで」 「あははっ、ごめんごめん! これ、お裾分け。清次さん好きだったでしょ、柿。お供えしておいて」 「ありがとう、お父さん喜ぶよ」 「ちわーっす、小春。ヒナタいるか?」 「田中のおじさん? ヒナタは買物中だけど」 「なんだよ! まぁいいや。じゃあ帰って来たらうちに来るようにいっておいてくれ」 「何かあるの?」 「将棋。前回負けっ放しだったからなー今日こそギャフンといわせてやる!」 「…あっそ」 小さなネジ工場のひとり娘だった母と結婚して野々宮家に婿入りした父が亡くなってからもうじき一ヶ月が過ぎようとしていた。 父と入れ替わるように家にやって来た自称ロボットのヒナタは今やすっかり町の人気者になっていた。 町の人にヒナタの事を『お父さんが作ったロボットで私の面倒をみる為に家にいるんです』と紹介したらみんな一斉に『清ちゃんだったらありうる話だねぇー』と何故か納得しちゃって、それ以来ヒナタはすぐに町内にとけ込んでしまっていた。 「小春、ただいま。──ん、この柿は?」 「牧村のおばさんがお父さんにって持って来たの」 「そうか。後でお礼に行かないとな」 「それと田中のおじさんから将棋するから家に来いって」 「あぁ、分かった。家事を終わらせたら少し行って来る」 「……なんかヒナタ、人気者だね」 「人気者?」 買って来た食材を冷蔵庫に仕舞いながら私の話に付き合っているヒナタは変な顔をした。
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