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仲のよかった近所の人たちがこぞって私を心配して連日のようにひとりになった私の元を訪ねに来てくれていた。
先ほどの安おじさんこと安岡のおじさんは母の幼なじみだった人で殊更私を気に掛けてくれているひとりだ。
「──はぁ……」
決して大きくない工場兼自宅。自室のベッドに寝転がってため息をつく。
母が死んで私が物心をついた頃から父はアルバイトだといって時々何処かに出かける事があった。それは週に一回だったり時には三、四回だったり。日にち、時間共にバラバラ。
だけど父がいない間は近所の人が代わる代わる私の面倒を見てくれたから寂しくはなかった。
──ただ、父が何をしているのかは全然知らなかった
「……」
父が事故で死んだことはとある大学からの電話で知った。
父のアルバイト先が大学だったそうで、その大学で何かの実験中に事故に遭ったということだった。ちなみに死因は感電死だそうだ。
(お父さん…何をやっていたのよ)
大学側から詳しい事情が聞けていない中、近所の人を中心に町内会の協力でとりあえず葬儀を終えたという状況だった。
ぼんやりとしている頭にピンポーンとインターホンが鳴る音が届いた。
「…ん?」
また近所の人が来てくれたのかと思いのっそりと起き上がり玄関に向った。
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