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「あの……大変訊き辛いのですが……佐野先生には一体どういった用件で会いたいとおっしゃっているのでしょうか」
「え? どういったって」
なんだか言い方が変だなと思った。彼の言葉から案内するのを躊躇っているようなニュアンスを感じた。
「お嬢さんは佐野先生の事を知っているんですか?」
「いえ…全然知らないんです。ちょっと訊きたい事があって訪ねただけなんですけど」
「なら! なら会わない方がいいですよ! 出来るなら会って欲しくない!!」
「は?」
突然ガシッと両腕を掴まれ激しく言われた。
「聡明なお嬢さんが佐野先生なんかに会って万が一……万が一にでも毒されでもしたら──」
「酷いいわれようだなぁ」
「「!!」」
いきなり背後から聞えた声に私と男の人は驚いた。振り向くと其処には背の高い派手な顔立ちをした男性が立っていた。
(わっ……すごくカッコいい人)
ほんの少しどこかで会ったような気がしたその男性をマジマジと見ていると私の視線に気がついたその人はニッコリと笑いかけた。
「わぁぁぁぁー!! で、でで出たっ! 色情魔!!」
「え、色情魔?!」
「おーい、なんかすごいいわれようなんだけど? 君、何処の学部の学生?」
「ひぃぃぃー寄るなっ! 淫らなオーラが移るぅぅぅー!!」
「あっ」
真っ青な顔をしながら男の人は私を置いて逃げて行ってしまった。
その様子を呆然と見ていた私はいきなり現れた美形の男性とその場でふたりきりになってしまった。
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