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『その研究の集大成が其処にいるヒナタです。小春の兄代わりとなってくれる設定で作りました。もし万が一、お父さんが病気か事故か、いずれかの理由で小春の元からいなくなった場合はヒナタがお父さんの代わりに家族となります』
「お父さんの……代わり?」
『どうかヒナタが小春の寂しさを少しでも紛らわす存在となりますように心より祈っています。──幸せになるんだよ、小春』
「……」
そこでレコーダーの音声は終わってしまった。
しばらく父の声の余韻に浸り一通り泣いた後、私はゆっくりと彼の方に向き合った。
「まさか……本当にロボット…なの?」
「本当だ」
「……」
(いや、そういわれても何処からどう見ても人間にしか見えないんですけど)
ロボットなんて映画やドラマの中の世界だけのものでしょう?──と思った瞬間、彼は右手にはめていた手袋を外した。少し光沢のある手の甲がギィーと音を立てて開いた。
「?!」
其処にあったのはいわゆる電化製品とかで見られる電子回路が詰まったパーツだった。
「な、な……ななな……」
目の前で繰り広げられた光景に衝撃を受けた。
「とりあえず簡単に直ぐ開けられて中を見せられるパーツは此処と、後は臍と男性器の間にある処だが──其処も見るか?」
そういいながら彼はベルトに手を掛け外す仕草をした。
「やっ! い、いい! 其処はいいっ! 止めて!!!」
咄嗟の事に赤くなりながら慌てて彼のベルトを外す手を握った。
(! 手……冷たい)
金属質独特の硬さと冷たさ。それは人間の温もりを感じない質感だった。
「……本当にロボット……なんだ」
「──あぁ」
「……」
にわかには信じられない話だけれど父が遺言で残したメッセージとロボット。
それを直接目にしてしまった以上この状況を受け入れるしかないと思ってしまったのだった。
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