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今でも時々思い出してしまう。私が陽南太と結婚すると宣言した時の和馬や町内の人たちの反応を。
陽南太をロボットだと思い込んでいた人たちに陽南太は本当は人間なのだと説明したがそれを中々信じてもらえなくて苦労した。
ややこしい話だけれど、結局は陽南太がロボットだろうと人間だろうと関係ないと言ってくれたみんなの言葉が嬉しかった。
そんなわけで今ではすっかり且つて父がいたポジションに陽南太が落ち着いているような感じだった。
「和くん! まーた小春ちゃんのところで油売ってるっ」
「ゲッ、煩いのが来た!」
「環ちゃん、こんにちは」
「こんにちはー小春ちゃん。いつもうちの旦那がお邪魔してごめんね」
和馬の奥さんの環ちゃんは私たちよりひとつ歳下の幼馴染で、同じ町内のお米屋さんの娘だった。
「お店にお客さんが来てるのよ。早く戻って来て」
「あぁー面倒臭いなぁー。んじゃまたな、小春」
「はいはい、またね」
環ちゃんに首根っこを掴まれて帰って行くいつもの光景が微笑ましくて思わず目を細めてしまった。
「小春さん、先刻空くんのお母さんから連絡があってお迎えが1時間くらい遅れるそうです」
「はい、分かりました」
預かっている子どもの数も年々増えて来てそれに伴い保育の先生や職員さんの数も増えて来ている。
大変だけどやり甲斐のある仕事だと思うとつい張り切ってしまう。
「ただいま、小春」
「ただいまぁー母ちゃん」
買物から帰って来た陽南太の声に続いて聞えた声に顔が綻ぶ。
「おかえりなさい、陽南太、夏輝」
6年前に授かった陽南太との息子は今年小学校に入学する。
誰に似たのかやんちゃで時々困ってしまう事もある。
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