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「帰りにバッタリ夏輝と会って一緒に帰って来た」
「父ちゃんまた八百屋のおっちゃんに捉まって長々と話していたからさ、おれが助けてやったんだよ」
「ふふっ、またお喋りの相手させられたの?」
「いや、最初は支払いの時にレジが開かなくなって困っていたから直していたんだけどそれが終わったらお礼にって色々出されてよばれていたらつい──」
「陽南太らしいなぁ」
「父ちゃんは無駄にカッコいいし頭がいいのに気さくだからダメなんだよ! そういうキャラはもっとこうクールでつっけんどんとしてなくっちゃ!」
「なんだ、それ」
夏輝が陽南太に向かってクールな男とはこうあるべきだ! というような持論を熱く語っている。
夏輝なりの父親像があるのか、延々と続く夏輝の話を陽南太はとても真剣に訊いていた。
そんなふたりを見ているとやっぱり心がポカポカと温かくなって来る。
「おぉーい、夏輝いるかー。徹矢さんだよー」
「あ、じいちゃんだ」
「ちょ、じいちゃんじゃないよ! 俺のことは『徹矢さん』と呼んでっていっているでしょーに」
「だってじいちゃんはじいちゃんだよ?」
「若作りのじいちゃんだよね」
「聞こえているよ、陽南太」
「いらっしゃい、お義父さん」
「あぁー小春ちゃん、いつ聞いてもいい響きだなぁ~『お義父さん』って」
「…すぐに帰って」
「今来たばかりだから、陽南太!」
義理の父親になった佐野先生は相変わらず大学で無駄に色気を振りまいているらしくて、陽南太とふたり揃って女子大生に追いかけられている姿がよく見られるそうだ。
これは私たちの母校である条林大学の事務職員になった親友のあかりからの情報だ。
あかりは高校生の時につきあっていた彼氏じゃない人と結婚した。子どもはこれから授かる予定らしい。
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