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「じゃあ行って来ます」
「小春、弁当」
「あっ、忘れてた」
「しっかり食べて大きくなれ」
「……行ってきます」
ヒナタの私への対応がいちいち小さな女の子に対する接し方みたいでちょっと戸惑ってしまう。──でも
(変に女扱いされないから私もヒナタを意識しないでいられるのかも知れない)
最初はロボットとはいえ異性のヒナタにドキドキして仕方がなかった。
ただでさえ背が高くて美形でクールで、たまに色っぽかったりするものだから余計に一緒に住む事に対して抵抗があった。
だけどヒナタに至っては最初から私に対して異性としての扱いはなく、純粋に兄的要素をもって接してくれていたのだ。
(まぁロボットなんだから当たり前なんだけどね)
でも私は未だにヒナタが本当にロボットなのかどうか疑っていた。
「おう、小春~~はよっ」
「和馬、おはよう」
家を出てから数歩行った処で幼なじみの安岡和馬に会った。
和馬は電気屋の安おじさんの息子だ。同じ歳で家族ぐるみで付き合いのある、特に仲のいい幼馴染だった。
「ん? その小っこい袋、なんだ」
「お弁当だよ。ヒナタが作ってくれた」
「ヒナタって……あのロボット、まだいるのかよ」
「いるよ。お父さんの遺言だから」
既に近所の人たちにヒナタの存在は知れ渡っていた。
父が私のために残してくれた遺品のロボットだと説明するとご近所さん達は揃って『清ちゃんならロボットの一体や二体作っちまうよなー』と変に納得してヒナタの事を快く受け入れてしまっていた。
ちなみに清ちゃんというのは私の父、清次のあだ名だ。
周りの人たちがなんの疑問もなくヒナタを受け入れてしまっている環境に戸惑いつつも、なんだかくすぐったい気持ちになってしまっている私だった。
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