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「関さん」
「あっ、野々宮さん」
「陽南太でいいですよ。義理ではありますが親子になるんですから」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
「来週の食事会、妻も出席出来るみたいなのでふたりで伺います」
「そうですか。分かりました、お店には此方から連絡しておきますね」
私と佐野さんの結婚話は瞬く間に進んで流れ的に佐野さんの息子である陽南太さんの知るところになった。
陽南太さんがどういう反応をするのかと内心ドキドキしていたけれど、いともあっさりと私たちを祝福してくれたので少し面喰ったくらいだ。
日取りがいいということで入籍とそれを祝う身内だけの食事会というのを来週開くことになっていた。
「お願いします。──それと」
「?」
「あの……父のことをずっと好きでいてくれてありがとうございます」
「!」
徐に頭を下げられてまた驚かされてしまった。
「見かけがあんなでふざけたところも沢山あるんですけど……でも性根はとても慈悲深くて優しくてかなりいい性格をしていると思いますので」
「……」
「どうか父と末永く寄り添って行ってください」
「ひ、陽南太、さんっ」
「え──……あっ! な、なんで泣いて──」
だって……
だってこれ……
(泣かないなんていう方が無理でしょう?!)
「あ、あぁぁぁー陽南太、なんで櫻子ちゃん泣かしているんだよ!」
「げっ……煩いのが来た。じゃ、じゃあすみません、俺、逃げます」
「あ、ありがとう! 陽南太さん」
私の元に駆け寄って来る徹矢さんを照れ隠しに避けている陽南太さん。
その去り際に微笑んでくれた陽南太さんの笑顔を見た瞬間、私の花筏の辿り着く先は光いっぱいのとこしえなのだと確信したのだった──。
花筏の行方(終)
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