0人が本棚に入れています
本棚に追加
「野比くん、小幡産業の見積もり取れてるかな」
「あ、まだです、すいません。これからアポ取って見積もり貰ってきます」
「頼むよ」と言って、課長はまたノートパソコンに目をやった。僕は小幡産業に電話をする。数コールの後、繋がった。
「はい、小幡産業株式会社です」
「お忙しい所、誠に申し訳ございません。南原商事の野比と申します。あの、山田様はいらっしゃいますでしょうか?」
「確認してまいります、少々お待ちください」
10数秒の保留音、エリーゼか、これ僕好きなんだよなぁ。
「はい山田です」
少し聞き入っていたのでハッとした。
「あ、えっと南原商事の野比です」
「あー! 野比さん! どうしましたか今日は」
「はい、実は見積もりの方、出来てるかなと思いまして」
「はいはい! コネクターの件ですよね! バッチリですよ! 今日いらっしゃいますか?」
「はい、出来たら今日お伺いしたいかと……」
「かしこまりました! では、午後2時辺りでいかがです?」
「1時間後ですか、ご迷惑にならないですか?」
「なに、大丈夫ですよ! ではお待ちしてますね!」
がちゃり!と勢いよく電話が切れた。山田さん、テンション高いし声も大きいから苦手なんだよなぁ。剛を思い出す。
僕は課長の所に報告に行った。
「課長、これからお会いして下さるようなので、小幡産業行ってきます」
「ん、よろしく頼むよ」
課長はノートパソコンから目を離さず言った。僕は自分の席に戻ると、ジャケットと鞄を持った。
「いってきまーす」
フロアの誰からの返事はない。みんな必死でパソコンとにらめっこしてる。
最初のコメントを投稿しよう!