南原商事

2/5
前へ
/5ページ
次へ
「野比くん、小幡産業の見積もり取れてるかな」 「あ、まだです、すいません。これからアポ取って見積もり貰ってきます」  「頼むよ」と言って、課長はまたノートパソコンに目をやった。僕は小幡産業に電話をする。数コールの後、繋がった。 「はい、小幡産業株式会社です」 「お忙しい所、誠に申し訳ございません。南原商事の野比と申します。あの、山田様はいらっしゃいますでしょうか?」 「確認してまいります、少々お待ちください」  10数秒の保留音、エリーゼか、これ僕好きなんだよなぁ。 「はい山田です」  少し聞き入っていたのでハッとした。 「あ、えっと南原商事の野比です」 「あー! 野比さん! どうしましたか今日は」 「はい、実は見積もりの方、出来てるかなと思いまして」 「はいはい! コネクターの件ですよね! バッチリですよ! 今日いらっしゃいますか?」 「はい、出来たら今日お伺いしたいかと……」 「かしこまりました! では、午後2時辺りでいかがです?」 「1時間後ですか、ご迷惑にならないですか?」 「なに、大丈夫ですよ! ではお待ちしてますね!」  がちゃり!と勢いよく電話が切れた。山田さん、テンション高いし声も大きいから苦手なんだよなぁ。剛を思い出す。  僕は課長の所に報告に行った。 「課長、これからお会いして下さるようなので、小幡産業行ってきます」 「ん、よろしく頼むよ」  課長はノートパソコンから目を離さず言った。僕は自分の席に戻ると、ジャケットと鞄を持った。 「いってきまーす」  フロアの誰からの返事はない。みんな必死でパソコンとにらめっこしてる。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加