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「いやぁー! 野比さんお久しぶりです!」
会うなりすぐに握手してきた。力が強くて痛い。
「お久しぶりです、山田さん」
僕も握り返すが、如何せんひ弱な力では大して効果はない。
「……もしかして、煙草吸われました?」
ドキッとした。山田さんは鼻をひくひくとさせながら言った。
「すいません、うちの会社喫煙者あまりいないもので」
山田さんは苦笑いしながら言った。そうか、自分では気が付かなかったけど、臭うのか。
「すいません、息抜きのつもりで吸ってしまって……」
「ああ、良いんですよ! あ、そうだ! うちで作ったエアシャワー使います? パチンコ屋とかにも置いてあって好評なんすよ!」
「はぁ、エアシャワーですか」
僕は言われるがままに、山田さんについて行った。広いロビーの一角にあった。円柱型のクリアケースのような形をしていた。
「従来のモデルはエアーを横方向から吹き付けるものでしたが、今回のは上から吹き付けるんです! その名もノックアップエアー!」
押し込まれるようにして入った。まるで保管されているフィギュアになった気分だ。天井にはそれらしき機械が付いている。見上げていると、強烈な風がのしかかるように吹いてきた。
「ぶあああ!」
10数秒の後、風はやんだ。乱れた髪型を直しながら外に出ると、ニコニコと笑顔で山田さんが迎えてくれた。
山田さんはひくひくと僕のスーツの匂いを嗅ぐと「うん! 煙草の匂いは消えてます!」と満足げに言った。
そうなのかなと嗅いでみるが、僕には違いが分からない。まぁ煙草の匂いがついてても分からないくらいだからなぁ。
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