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「優子さん宛の手紙が、入ってたから。」
「うそぉっ」
彼女の顔がみるみる青くなっていく。
「間違っちゃった!
どうしよ…パパにあげちゃった…。」
「えっ?どうしたの?」
彼女は泣きそうな顔をして、
ふるふる震えている。
「しょうくんに、渡すはずだったチョコ、
パパにあげちゃった…。」
「貰えただけで嬉しかったから、
本当に、僕は大丈夫だよ。」
「違うのっ!手紙が…。」
ううう…とうつむき
しゃがみ込んでしまった。
お父さん?手紙?僕宛てに?
「ごめん…、全然分かんないから、
聞いていい?」
「………、しょうくんに好きだって!
好きだって、書いた手紙を…。
パパにあげちゃったの。」
去年、貰ったチョコは
優子さん宛で、優子さんが休みで、
お父さんにあげた…? 僕宛のを?
優子さん宛のと、僕宛のとの入れ違い?
いや待て待て、僕宛のには好きだって?
しかも、お父さんに?
「マジか…。」
それは一大事だ。
「どうしよー!」
どうしようも、こうしようも、
今更遅いのでは…。
というか去年、彼女からチョコを
貰ってから避けられてた意味が
何となく分かった。
彼女からしたら、大変な事だけれど、
僕は何だか無性に可笑しくて笑ってしまった。
「笑わないでよー…。」
「ごめん。可笑しくって。」
そうだった、僕は不器用ながらも、
一生懸命で素直な彼女が、好きなんだ。
「あかりちゃん。」
彼女の名前を、初めて呼び返す。
なんとか顔を上げてくれたみたいだ。
「初めて会話した時から、好きでした。
僕と付き合って下さい。」
「……はい!」
彼女は再び泣いてしまった。
~END~
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