160人が本棚に入れています
本棚に追加
「それにしても良い食べっぷりだねー! やっぱり若い男は違うね、何かパワーの源を補給してるかのようだね」
カウンターから乗り出すように、キッチン担当の望月さんが顔を出した。
長年ホテル業界で名を馳せて来た一流のフレンチシェフを、オーナーの北川さんがどうやって引き抜いて来たのか、その裏事情にはまだ立ち入る勇気がない。
「俺、こう見えてスイーツ男子なんです」
昼のカフェから、夜のカジュアルフレンチレストランへと変貌を遂げる、ほんの刹那。
たった一時間だけの閑散とした時間に彼、悠真くんはこの店にやって来る常連さんだ。
「こう見えてって言うけど、スイーツ好きそうだけどね」
ホールの水野さんがエプロンを着けながら、奥のスタッフルームから小さな顔を出した。水野さんと悠真くんは顔見知りらしいのだけれど、どこで知り合ったのかは謎だ。
ただ仲が良いのは確かで、悠真くんがこのカフェに来るようになったのも、水野さんと出会った事がきっかけだと北川さんが言っていた。
このカフェにピッタリの、向日葵みたいな笑顔をする水野さん目当ての男性客は多い。
だからてっきり、悠真くんもその一人かと思っていたのだけれど……
「うんまぁーい!」
そう、単に彼は、うちのチョコレート菓子が目当てだった。
最初のコメントを投稿しよう!