チョコレートバイアス

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「それにしても良い食べっぷりだねー! やっぱり若い男は違うね、何かパワーの源を補給してるかのようだね」 カウンターから乗り出すように、キッチン担当の望月(もちづき)さんが顔を出した。 長年ホテル業界で名を馳せて来た一流のフレンチシェフを、オーナーの北川(きたがわ)さんがどうやって引き抜いて来たのか、その裏事情にはまだ立ち入る勇気がない。 「俺、こう見えてスイーツ男子なんです」 昼のカフェから、夜のカジュアルフレンチレストランへと変貌を遂げる、ほんの刹那。 たった一時間だけの閑散とした時間に彼、悠真くんはこの店にやって来る常連さんだ。 「こう見えてって言うけど、スイーツ好きそうだけどね」 ホールの水野さんがエプロンを着けながら、奥のスタッフルームから小さな顔を出した。水野さんと悠真くんは顔見知りらしいのだけれど、どこで知り合ったのかは謎だ。 ただ仲が良いのは確かで、悠真くんがこのカフェに来るようになったのも、水野さんと出会った事がきっかけだと北川さんが言っていた。 このカフェにピッタリの、向日葵みたいな笑顔をする水野さん目当ての男性客は多い。 だからてっきり、悠真くんもその一人かと思っていたのだけれど…… 「うんまぁーい!」 そう、単に彼は、うちのチョコレート菓子が目当てだった。
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