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悠真くんは水野さんを一瞥しただけで、再び手元のお皿に視線を落とした。添えられた生クリームをザッハトルテですくいながら、大口を開けて一口でぱくりと頬張る。
だけど困った事に、自称「スイーツ男子」と豪語する悠真くんのお陰で、ディナー用に焼いたケーキ類が足らなくなるという事態を近頃引き起こしている。
「永野さん、もうショーケースの中、殆ど無いですよ」
着替えを終えた水野さんが、ショーケースを開けるなり肩を竦めた。
「これ、立派な営業妨害だと思わない?」
私は苦笑しながらカウンター脇のテーブル席に目を向けた。
相変わらず美味しそうにザッハトルテを頬張る。
男の子なのにこんなに甘い物が好きだとか、ちょっと変わってる。
でも悪気の無い笑顔だったり、ほんと幸せそうにケーキを頬張る顔は、結構好きだったりする。
「あ、永野ちゃん嬉しそう。悠真くんと永野ちゃん、僕はアリだなぁー」
「はいはい。私はナシですから」
望月さんがカウンター越しに茶化してくるのはいつもの事で、私は毎度の様に二つ返事で厨房へと舞い戻る。
こんな事言うと、姉さん女房を持つ望月さんには怒られるかもしれないけれど。
年下とか、 全く興味が無い。
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