第1章 無駄

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「ありがとう。」額に銃口を向ける私に向かっておんぼろの兵隊が私に向かって言った言葉。 あの兵隊は地雷を踏んで両足を失い、医療施設も程遠いため生きるという営みを諦めざるをえなかった。だが、足を失っただけでは直ぐには死なない、もがき苦しみ泣き叫び体を引きずり一人の人間として水分を必要とし、栄養を必要とする。それがどういう事なのか、集団行動をしたことがある奴が少し考えればわかる事だ。 死ぬ奴にやる水は無駄、死ぬ奴にやる飯は無駄、死ぬ奴に消費する医療器具は無駄、死ぬ奴に貸す寝床は無駄。 そう、水分、食料、医療器具、土地が不足している戦場にとって彼のような「未来の屍」は「無駄」以外なんでもない。 そんな「無駄」を無くしてしまうのが私の仕事だ。これ以上「無駄」を作らないように「無駄」を殺してしまうこと最も無駄の少ない銃で銃弾が無駄にならないように確実に殺してしまうこと、これがこの戦場で私に託された「人のためになる仕事」だ。
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