愛というものをさだめられた日。

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  「そっか。俺にも言ってないのに陽香に言っちゃうなんて……母さん、ひどいな」  笑い混じりにそう言うと、陽香は軽く唇を噛みしめてうつむいた。 「怒ってるんじゃないよ。顔、上げて」 「……仁志くん」 「俺が知ったのはね、8歳の時だよ。クリスマスの夜」 「そんなに小さい頃だったの」  驚く陽香を見上げ、ふっと笑いが込み上げてきた。 「うん。最初はショックだったけど。その話を聞かなかったら、俺は何の疑いもなく過ごしてたんだろうなって思ったんだ。何の不自由もなく育ててくれる両親はすごい、ありがたいって思うようになって……なら俺も、知らないふりを通そうって。そう決めたんだ」 「仁志くん」  陽香は車椅子のストッパーをかけ、たた……と俺の前まで回り込み、目の前でしゃがんだ。そのまま俺の顔を見上げてくる。その瞳に、また涙が浮かび始めていた。 「……あたし、その時の仁志くんのところに行きたい。今すぐ。ぎゅうって、抱いてあげたい」  どうにも照れくさくて、うつむいた。 .
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