愛というものをさだめられた日。

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  「ったくよー。同じ病院に運ばれてくるもんだから、びっくりしたっつうの」  事件の日の大雨が嘘のような小春日和。浅海さんが俺のベッド脇の椅子に座っていた。いつものジャージ姿だから、聞いていなければ怪我人には見えない。  あの日、久遠寺に階段から振り落とされた一色を庇い、自分も落ちた浅海さんは案の定重症だった。  病院まで自力で車を運転してきた浅海さんは、医者からひどく叱られたそうだ。俺たちは、フロアは違うものの同じ病院に入院……という事態になっていた。  俺がここに運び込まれ、手術を受けてからもう3日。今日の午後から自由に動いていいと許可が出ているが、刺し傷を負った体を動かすのがおそろしくて、まだベッドの上にいた。 「午後から身内以外の面会もOKなんだろ? 家族でもないハルたんがよく来れたな」  浅海さんはカーテンを開け、俺のサイドテーブルにあったチョコレートを口に入れながら言った。その言葉に、俺の頬がカッと熱くなる。 「手術は家族の承諾がいるから、陽香が学校経由でうちの親を呼んでくれたんだけど……」 「ああ、うん。そっか、だよな」 「でも、友人だなんて言ったら帰れと言われそうだったから、俺と一緒になる予定だって言ったらしくて。だから家族扱いというか、その……」  もうひとつチョコレートを口に入れようとしていた浅海さんが、俺の顔を凝視して動きを止めた。その眉が、じりじりと寄せられる。 .
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