愛というものをさだめられた日。

3/26
前へ
/27ページ
次へ
  「は? どういうこと」 「……だから、」 「なに。結婚するってこと? お前ら、別れてたよな。いつの間にそんな話になったの」 「なってないですよ」 「え?」  浅海さんは行間を読めないのか、読もうとしないのか。それとも、読んでいてあえて言わせたいのか。 「お前が言ったんじゃないの。ハルたんに結婚しよって」 「俺は思ってますけど、まだ言ってないですよ」 「……思ってるんだ……まあ、お前の執念なら当然そうだろうけど、うん」 「なんですか。執念って」  指先でつまんだチョコレートが溶けそうになっていることに気付き、浅海さんは慌てて口の中に放り込んだ。そのままじっと俺を見る。 「ははあ。やるな。女に腹くくらせたわけか」  話しているうちにどんどん恥ずかしくなってきて、前髪をガシガシと掻く。浅海さんはニヤニヤし始めた。 「なんですか」 「いや、すごいと思って。7年もグズグズしてたのに、状況が動く時って一瞬なのな」 「……そうですね」  俺が口を尖らせてうつむくと、浅海さんは個室だからか遠慮することなくケラケラと笑った。 .
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加