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「は? どういうこと」
「……だから、」
「なに。結婚するってこと? お前ら、別れてたよな。いつの間にそんな話になったの」
「なってないですよ」
「え?」
浅海さんは行間を読めないのか、読もうとしないのか。それとも、読んでいてあえて言わせたいのか。
「お前が言ったんじゃないの。ハルたんに結婚しよって」
「俺は思ってますけど、まだ言ってないですよ」
「……思ってるんだ……まあ、お前の執念なら当然そうだろうけど、うん」
「なんですか。執念って」
指先でつまんだチョコレートが溶けそうになっていることに気付き、浅海さんは慌てて口の中に放り込んだ。そのままじっと俺を見る。
「ははあ。やるな。女に腹くくらせたわけか」
話しているうちにどんどん恥ずかしくなってきて、前髪をガシガシと掻く。浅海さんはニヤニヤし始めた。
「なんですか」
「いや、すごいと思って。7年もグズグズしてたのに、状況が動く時って一瞬なのな」
「……そうですね」
俺が口を尖らせてうつむくと、浅海さんは個室だからか遠慮することなくケラケラと笑った。
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