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「お前、もしかして拗ねてるの。“俺が先に言いたかったのにー!”って」
「……ナースコールのボタン、押しますよ。浅海さん見てたら気分が悪くなりました、って」
「待て待て。ハルたんは意思表示をしただけだろ。ビシッとキメるのはお前の仕事」
わかってますよと返しかけて、負け惜しみはやめることにした。
「ちょっとくらい、ガス抜きになってくれよ。こっちも色々頭が痛い」
「……なんです」
「愛美が、父親に今回のこと話したらしくてな。午後、俺んとこに面会に来るんだよ」
「一色の父親が?」
「んー。愛美は俺たちが付き合ってることは伝えてないって言ってたけど、まあ、この機会に挨拶したほうがいいのかどうか、迷ってて」
「……それこそ驚きですね。卒業まで内緒にするんじゃなかったんですか」
俺が首を傾げると、浅海さんはぎゅっと眉根を寄せた。
「いや、さすがに変だろ。受け持ちの生徒とはいえ、普通の教師は女生徒をかばって階段から落ちたりしないからな」
「浅海さんがそう思うなら、ご挨拶すればいいんじゃないですか。俺は、熱血教師がとっさに体張った、で済むと思うんですけど、浅海さんの気が済まないなら正直に言うべきかと」
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