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「チビ、取りあえず真上にある電線まで上げて、そこから落とそう。」
それを聞いたチビは嬉しそうにこっちを見てから、小さな翼を精一杯羽ばたかせた。
―必死に電線まで上がっていくその様子を見て、私が持ち上げればよかったと少し思った。
やっとの思いで電線まで上がったチビが疲れて早く落としたそうな様子でこっちの合図を待っているのが下からでもよく分かったので、私は直ぐに「じゃあ、落として」と指示を出した。
その指示に従いチビの嘴の力が抜けるやいなや、缶詰は重力の法則に従って落下しはじめた。
―一瞬だが、薄い雲の張った秋空と黄葉した茂るイチョウの葉の中を落ちていく光景は時間を無いものとした。―そして引き寄せられた缶詰は、最終的に私の前の地面に強く叩きつけられた。
羽をびくつかせてしまう程にそれは中々の衝撃のように感じたが、しかしやはりびくともせず、形が変形するどころか、傷すらもほとんどついている様子はなかった。
「チビ、やはりだめだ。今度は車に轢かせよう。」
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