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 舞台袖から愛美を眺めていると、先輩の与野さんが近付いて来る。うちの大学のミスコンのスタッフは全員スーツを着ている。先輩も俺もダークスーツを着ているが、就職活動が終わった先輩はダークスーツとして今後一生着るが、就職活動を間近に控える俺は今着ているスーツがリクルートスーツと名称が変わる。  与野さんは総合商社に内定が取れたと聞く。 「三上、お疲れ」 「お疲れ様です」  与野さんはこの企画にほとんど関わっていないが、激励で会場まで足を運んでくれていた。  俺は壇上の愛美から一旦目を離し、横目で与野さんの顔を見た。確かにミスターコンに出ていた美青年達と比べるとイケメンと云う物差しでは負けている。しかし与野さんの顔には仕事が出来そうな頼り甲斐を感じる。普段全然気にしていなかった与野さんの顔だが、内定が取れたことを聞くと、その時から急に凛々しく見えた。  壇上では司会者のナレーションに合わせて、女の子達が一人一人ランウェイを歩いて観客達に近付いて行った。ランウェイの崖まで辿り着くとポーズを決めたり、手を振ったり、笑顔を決めたりして、会場の男達の愛欲をそそり、戻って行く。  俺は愛美にしか興味無いから、女の子の代わりに三上さんの顔を見つめていた。同じ男に凝視されると流石に違和感を覚えて、 「どうした?」  与野さんが訊いてくると、 「与野さん商社に就職決められたじゃないですか。俺がミスコンに関わっているからこう思っちゃうんでしょうけど、俺は就職活動も顔で採用している気がするんですよ。内定が取れたのを聞いてから、与野さんの顔が凄くカッコ良くて、頼もしくて、素敵だなって思ってしまったんです」  与野さんは照れ笑いを浮かべつつ、俺の右肩に優しく触れて、 「お前もきっと良い顔になるよ」
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