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8
翌日、俺は大学のカフェテリアで渡会に失恋を報告した。
「仕方あるまい。次の恋を探せば良い」
俺はその時にたまたまテレビで殺人事件が報道されていて、愛美を殺したくなったと皮肉を言った。
「そんなことしちゃいけないよ」
渡会は分かっていることしか言わない。
すると、卒業を控えている与野さんが珍しく俺達に近付いて来た。俺と渡会は与野さんに挨拶し、3人で食事を始めた。いつも使う窓側の席では3人だと利用しづらいのでテーブル席に移る。俺が暗い顔をしていると与野さんが心配した。自分から話すのは億劫なので渡会に話して良いと催し、彼の口からミスキャンパスの柴田愛美にフラれたことを与野さんに伝えた。与野さんは憐憫の顔で、
「やっぱり、フラれたのか……」
「やっぱり?」
違和感は俺にも有ったが、そう訊いたのは渡会だった。
「さっき柴田の女友達に聞いたんだ。柴田が三上と付き合ったのは、好きだからじゃなくて、ミスコンに出るためのコネ作りだったって。ミスコンの実行委員の三上に近付けばグランプリは兎も角、本戦に出ることは出来るだろって算段だって、一緒にお酒飲んでいたIT会社社長に話していたって」
どうして、それを言ってくれなかったんですか!?
そう言って詰め寄る気持ちは起きなかった。
与野さんは何も悪くない。
俺は利用されていただけだった。そうなると、1回目のデートですぐに手を繋いでくれたことも、Hの時に必ずコンドームを着けて避妊させたことも、全部ミスコンに合格して自分の株を上げ、女子アナになろうと云う魂胆だったわけだ。
俺が美しい柴田愛美を作っていたと思っていたが、そうじゃない。美しい柴田愛美を俺は作らされていたのだ。
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