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「彩ちゃん!?」
声を上げた緋浦が浴室に飛び込んでいくと、その身体を抱え起こした。
首筋が薄っすらと赤くなっているのに気づくと、首筋に触れ、脈を測る。
「うそ…でしょ……?」
愕然とした緋浦の腕から、徐々に力が抜けていく。
ようやくゆっくり動き始めた野本が緋浦の前で足を止め、向かいに膝をついた。
力を失っていく緋浦の腕の中から彩香の身体を抱き寄せると、目を見開いたままの彩香の顔に触れた。
呆然としていた緋浦だったが、ふと野本の表情を見て背筋を凍らせる。
今まで一度だって見たことのない顔をしていた。
それが怒りなのか、はたまた絶望なのか…緋浦には計り知れない。
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