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野本は、頬に…額に…そっと触れた後、その身体をきつく抱きしめた。
「なんで…こんなことに……」
緋浦がぼそりと呟いた。
突然の事で頭が働かない二人は、涙を流す事も無く、ただ夢と現実の狭間を揺れる。
野本が彩香の身体を抱きしめ直した時、ちゃりん…と音がして、緋浦はそれに視線を向けた。
『マスター2』の鍵が渇いた浴室の床に落ちていた。
ごくりと唾を飲んだ緋浦は、おそるおそるそれに手を伸ばし、ぎゅっと握り締めた後、背後を振り返った。
それがあるという事は、招かれざる客がさっきまでここに存在していた…と、いう事だった―――。
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