649人が本棚に入れています
本棚に追加
ひとりぼっちになった野本の部屋には、彩香の荷物が残っていた。
籍を入れたわけでもない二人だ。義父である神藤に遺品を返すのは当然なのだが、まだ踏ん切りのつかない野本は部屋の中をそのままにしておいた。
彩香の葬儀に参列するため北海道にやって来た翔も、少し長めの休みをもらってきたらしい。
生気を失った兄を心配し、甲斐甲斐しく慣れない家事をやっている。
「兄貴、仕事どうすんの?こんなに休んで大丈夫?」
翔が何を聞いても、あれから野本は一言だって話さなかった。
最初のコメントを投稿しよう!