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野本が無言で玄関を出ていくと、翔はため息を吐き、彩香の遺影に視線を向けた。
仏壇は神藤の自宅にあるが、遺影の写真だけ同じものをもらったらしい。
微笑んでいる彩香は幸せそうな顔をしている。たぶん、隣には野本が並んでいたのだろう。
こんなあっさりこの世を去ってしまった彩香に文句のひとつでも言ってやりたくなった翔は、遺影の前に正座した。
……が、言葉は出てこなかった。
出てきたのは、涙だけだった―――。
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