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同じくホールの壁際で休憩をとっている男性3人組が居た。どうやらお目当ての同人誌を無事買い終えたらしく、楽しそうに談笑していた。彼らは当初の目的を達成できたという、幸福なオーラを発していた。それにしても寒いなあ、というとりとめのない台詞にもうれしい感情が入り混じっている。私も今日、あんなふうに笑いたかった。長い列ができて、嬉しい感情とともに、笑顔を振りまきたかった。
彼らがあまりにも楽しそうなので、私は突然、話しかけてしまった。
「こんにちは。よかったら、飴ちゃんどうぞ。ちょっと余ってしまったので。」
彼らは私が唐突に話しかけたからか、少し困惑していた。当たり前である。
「えっいいんですか?」
「どうぞ、もらってやってください。」
私は撮って貰ったお礼用のお菓子を大量に用意していた。ひとつひとつ自分で梱包するので、意外と骨の折れる作業だ。マスキングテープを何種類か用意し、いそいそと袋詰めしていた自分を思い返した。袋上からメッセージを書き込んだりとあのときの私は、今日という日を待ちわび胸を躍らせていた。悲しいことにこの惨状なもので、当然大量に余ってしまった。カメラマンさんでなくとも、せめて会場内に居る人にあげようと思った。
彼らは快く受け取ってくれた。「お菓子ありがとうございます!頑張ってくださいね。」その言葉だけで私の胸の蟠りが少し払拭されたような気がした。
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