4話

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 ゲイバーの『ナイトムーン』で愁と出会い、愁に助けられ、愁に初めて抱かれた夜の事を晴斗は忘れられそうにもなかった。  愁に抱かれた土曜日の朝、晴斗はいそいそと身支度をして部屋から出る。フロントに向かうと、ホテル代は既に支払われていた。大人の男性として格好良い対応をする愁に、晴斗はただただ驚くばかりだった。晴斗は自分も、愁みたいにスマートな対応ができる大人の男性になりたいと、憧れを抱いた。  そうして、ぼんやりと夢見心地になりながら晴斗は、とあるアパートに戻って来ていた。現在、大学生である晴斗は、アパートで一人暮らしをしていた。玄関のドアをガチャリと開けると、寝室まで入って行った。寝室に置いてあるベッドの上で、ぼすんとダイブしたのだった。そうして、愁に抱いてもらった夜の事を思い出しては、晴斗は羞恥心から顔を真っ赤に染め上げるのだった。 (すごかった……本当に、すごかった……)  枕に顔を押し付けて、悶える気持ちを抑えようとするが、なかなか治まる気配が無かった。アダルトサイトで見ていた男性同士のセックスを、実際に経験してみると、一体自分はどうなってしまうのだろうか、不安と期待があった。けれど、愁に抱かれてみて、自分でアナルバイブを使い自慰する行為よりも、とても気持ち良かった。痛い思いも苦しい思いをする事は全く無かった。恐らく愁のテクニックが、他の人に比べて巧みなのも、きっとあるのだろうと晴斗は予想した。 (……また、抱かれたい)  金さえあれば、抱いてやると愁は告げてくれた。晴斗は、より一層バイトに励もうと決意したのだった。けれども、今日だけは、愁に抱かれたという余韻に浸っていたいと強く思い、明日から頑張ろうと決意を新たに、ベッドの上で静かに目を瞑るのだった。
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