1話

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 太陽が沈み、月が浮かぶ静かな夜。  月の光が差し込む夜の街中で、  今宵も美しい花の甘い香りに誘われて、  甘い蜜を求めた鮮やかな蝶が舞う。 *****  人々が眠りに就く静かな夜の街中で、ひっそりと佇んでいる一軒の飲酒店があった。飲酒店の名前は『ナイトムーン』と言う。お洒落な大人の雰囲気を漂わせる店の外見をしていているのが、特徴的だ。その飲酒店の前で、一人の青年がおずおずとしながら、立っていた。名前を在原晴斗(ありはらはると)と言った。柔らかい黒色の髪に、宝石の様に煌めく蜂蜜色の瞳。青年と言うには華奢な体つきで、幼い印象を抱かせる童顔の顔つきをしていた。  そんな晴斗は一人、飲酒店の前で緊張した様に立ち尽くしていた。飲酒店へ続く扉を開けようと手を伸ばしては、手を引っ込めて戻すという動作を何回も繰り返していた。飲酒店と言った店に入ること自体、晴斗は初めての経験ではない。けれど今回、訪れようとしている飲酒店は、他の店とは異なっていた。パソコンで検索して、見つけ出した特殊な飲酒店。晴斗はドキドキとしながらも、緊張しながらも、好奇心が沸きながらも、勇気を出して一歩、足を踏み入れたのだった。
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